【特集】ビーイングホールディングス㊥ 目指すは「運ばない物流」

【特集】ビーイングホールディングス㊥ 目指すは「運ばない物流」

2021年9月29日

物流業、運輸業、運送業……トラックで物を運ぶ事業を指す言葉は幾つもあるが、ビーイングホールディングス(HD、金沢市)は自らの物流業の目標として「運ばない物流」を掲げている

※ ㊤の記事は下記リンクから

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なんと、この言葉、2021年4月23日付で商標登録したというから、熱の入れようが単なるスローガンとは違う。同社ホームページから、この言葉に込めたメッセージを引用する。

「運ばない物流」は、当社の物流事業において「いかに効率的にモノを運ぶか」ということから「いかに合理的にモノを運ばないか」という発想の転換のもと、納品の時間、場所、数量が適切となるようコントロールして運ぶ考え方です。当社はかねてより「運ばない物流」を唱え続け、物流システムの合理化・改善を図ることで事業を発展させてまいりました。

(出典・ビーイングHDホームページ)

簡単に言えば、効率化を突き詰めれば運ぶ回数は減る、ということだろう。ところが、ここで一つの疑問が浮かぶ。

「運ぶのが仕事なのに、運ぶ回数を減らすとか、自分の首を絞めてるんじゃない??」

(出典・ビーイングHDホームページ)

筆者なりに答えを考えてみた。

近年、インターネット通販の普及や小売店舗の多様化から物流業の重要性が増す一方、トラックドライバーの長時間労働が問題となっている。これに関しては物流業者や荷主企業だけでなく行政も一体となり、改善に向けた検討を進める取り組みが各地で行われている(その例が「ホワイト物流」などだ)。

思うに、この問題には荷主企業の力が相対的に強いことが深く関連している。

つまり、物を運ぶ側は「下請け」であり「仕事をもらっている」という力関係が固定化しているため、トラックドライバーが顧客企業に到着しても、ひたすらに荷主による積み荷の準備が整うのを待つ「荷待ち時間」を過ごす状況が生まれる。

 

3PLで顧客の課題解決

この点、物流の効率化を突き詰めるには、どうしても荷主企業による商品の出荷体制を改善する必要が生じる。

この荷主企業の改善は、物流業者がムダを省けるだけではない。荷主企業にも計画的な生産や搬出を促すものとなるため、サプライチェーン(調達網・供給網)全体の効率化につながる。

こうした提案を第三者的な立場ですることを3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)という。物流業界ではひと頃から流行り言葉になり、いつしか定着してきたワードだ。

このようにコンサルティング的な業務を含めて提供できるようになると「A地点からB地点までモノを運ぶ下請け業者」という域を出られる。「運ばない物流」の背景には、主に、物流面から顧客のサービスを見つめ、その改善までも提案することで自社の付加価値を高める狙いがあるとみられる。

 

実は運ぶ側の課題対策にも?

ここで「主に」と言ったのは、そうした対外的な狙いのほかに、内向きの狙いもあると考えるから。

ここ数年は全国的に人手が不足し、もともと慢性的に足りていなかったトラックドライバーは、さらに人員が不足した。

もちろん、その度合いは企業によって濃淡があり、ビーイングHDのように上場している企業では他社に比べてマシだろう。ただ、仮に現状は足りていても、事業の拡大には人の確保がボトルネックになる場合がある。

より少ない人数で荷物を運ぶ方法を考えることは、将来的に自社の規模を拡大し、馴染みの薄い(つまり自社の知名度があまりなく、採用も難航しがちな)エリアに事業を広げる際、大いに助けになるはずである。

㊤の記事にも出てきた自社開発の各種システムは、初期投資こそ必要だが、完成すればランニングコストは大きくないはず。物流業は労働集約的(端的に言うと人力に頼りがちな産業ということ)になりやすいが、そこから脱却しようと手を打ち続けているところに、同社の凄みが現れている。

㊦では、有価証券報告書や決算説明資料から読み取れる同社の特徴や将来性を概観する。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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