【特集】ビーイングホールディングス㊦ トラック1台から上場、「4PL」で全国展開へ

【特集】ビーイングホールディングス㊦ トラック1台から上場、「4PL」で全国展開へ

2021年10月1日

創業者の話は面白い。会社員時代の鬱屈とした思い、独立、事業拡大、挫折、再起、他社の妨害、先輩の助力など、軌道に乗った会社では起こらないことがたくさん起こるからだ。ビーイングホールディングス(HD、金沢市)も、まさにそうしたドラマの上に成長し、今日の姿がある企業である。

過去の㊤、㊥の記事は以下のリンクから。

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まず、同社ホームページから抜粋した会社概要と沿革を示そう。

社名株式会社ビーイングホールディングス
本社東京本社(東京都千代田区大手町1-1-1大手町パークビルディング7階)
金沢本社(石川県金沢市専光寺町レ3ー18)
設立1986(昭和61)年9月17日
資本金6億3942万円
連結売上高183億9,000万円(2020年12月期)
連結従業員数2761人(2021年4月時点)

設立から30年余。売り上げ規模、従業員数は北陸にある純粋な地場企業としては有数の規模にまで成長した。現在は東証2部に上場している。それでは、沿革を要約する。

(出典・ビーイングHDホームページ)

1986年、現HD社長の喜多甚一氏が鶏肉の卸売り配送の「河内物流有限会社」を金沢市に設立。

89年には坂井市に本社を移すが、91年に再び金沢へ。96年には射水市に富山営業所を開設。97年には食品物流センター運営会社を設立。97年に物流事業に関する各種保険を付保する会社も設立。その後も北陸で買収や子会社の設立を繰り返す。

2005年には日用雑貨の物流センターを運営する会社を愛知県に設立する。以降も子会社の設立例を挙げればキリがない。北陸の物流拠点は白山市に置いており、そこに常温、冷蔵、冷凍の3温度帯に対応した食品用のセンターなども開設している。

タクシー業にも乗り出し、燃料の給油会社も買収。20年12月には東証2部に上場。その後も宮城、岩手、千葉などでセンターを開設している。

トラック1台から始め、取り扱い分野を増やし、周辺分野の事業も強化する。顧客の成長に合わせるように自社も遠方の地方に進出する。一見するとM&Aが多く派手な会社に映るが、よく見ると、意外なほど1歩ずつ前に進んできたことが分かる。

 

右肩上がりの業績

ビーイングHDの近年の業績を見てみる。21年12月期は会社による予想を用いた。

売上高は右肩上がりである。21年は200億円の大台も射程圏にある。

営業利益も売上高と同様に伸び続けている。もちろん、売り上げが増えれば利益は増えやすい。

この点、営業利益率は19年が3・33%、20年が4・11%、21年の予想が4・80%。利益率も少しずつ上昇している。

21年6月中間期の決算説明資料を見ると、自社従業員比率を高め、生産性管理システムで工程を見直して労働時間を短くした、と説明している。当時の原価率は88・8%。前年同期の91・8%から改善している。

自動運転や自動倉庫が当たり前の時代になればまだしも、物流業は現状で人力に頼る労働集約的な面が強い。同社の説明にもある通り、人件費をいかに下げるかが利益率改善の鍵となっており、同社は着々と取り組みを進めている印象だ。

 

「人の代わり」ではなく「人を補助する」仕組み

20年の有価証券報告書によると、同社は単独や他社と共同で、業務改善のための道具(機械)を作っている。ただ、地域の雇用を守るため、全自動化など「人の代わり」となる仕組みではなく、あくまで「人を補助する」仕組みを築こうとしているらしい。

有価証券報告書で紹介しているのは、音声認識システムを活用したピッキングシステム、カゴ車をまとめて運べるリフトなど。

同社の物流センター(21年6月末時点で全国48拠点)では、多くの人員と独自の機械が効率よく動き回っていることだろう。

こんなセンター網を持った上で、どんな事業を手掛けているのかと言うと、配送分野の業務に加え、同社の開示資料でよく出てくる言葉が「4PL」だ。

企業が物流業務を第三者企業に委託するのが「3PL」。その3PLに優れた物流企業(ビーイングHD)が、別の物流企業にコンサルティングを施すことを4PLと言うそう。平たく言えば、同業者向けコンサル業務ということだろう。コンサルは基本的に人件費ぐらいしか目立った費用を使わない。利益率の改善にはつながりそうだ。

主要顧客はクスリのアオキHD

同社の顧客は20年末時点で22社(年間営業収益が1億円以上の会社のみ)。

最も取引の多い企業はクスリのアオキホールディングス(白山市)で、売り上げの24%を占める。一番の大口顧客が店舗拡大を進めるドラッグストアというのは、ビーイングHDがコロナ禍で過去最高の業績を確保できた一因かもしれない。

次点は三菱食品で、構成比は19・6%。上位2社の構成比は計50%近くになる。普通の感覚だとリスクが高そうだが、相手はドラッグストアと食品である。感染症が広がろうが、気候が変わろうが、天災が起きようが一定以上の需要がある分野だ。特に問題はないだろう。

むしろ、積極的な物流センターの拡大のせいか、有利子負債の多さが気になる。

20年末時点の有利子負債は66億円超で、有利子負債依存度は49%の高さ。成長の過程で投資がかさむのは仕方ないが、こうした財務面の折り合いをどうつけていくかも課題になりそうだ。

同社が事業エリアを関東や東北に広げた背景には、アオキの店舗網拡大が影響したと推察する。顧客の事業拡大に合わせてエリアを広げれば、いざ投資しても肝心の仕事がない、ということがない。ただ、同社が特異なのは、その流れで早期に東京都心に本社を構え、関東、全国での事業展開に本腰を入れ、継続的な成長を企図する意気込みを示した点にあると思う。今後の成長が楽しみな1社である。(おわり)

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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