2022年12月21日、北陸電力が金沢市の金沢流通会館で開いた料金改定に関する説明会に参加した。既に公表されているのと類似の資料を基に淡々と説明され、幾つか「なるほど、そういうことか」と思ったことがあったので共有する。
※過去の記事は以下のリンクから
値上げ率の違い、規制料金が恵まれ過ぎてただけ
タイトルに「【続報】オール電化…」と掲げた当サイトの記事(上のリンク参照)でも紹介した通り、今回の値上げ率はオール電化住宅が対象の「自由料金」で平均11~12%、そうではないタイプの「規制料金」で平均45%となり、値上げ率に大きな差がある。
この点、会場では「オール電化は富裕層が住む家。そっちの値上げ率を低くするのは逆進性(所得の低い人ほど負担が大きくなる傾向のこと)が高い!」と怒る参加者もいた。
「規制料金」は燃料(石炭や石油)の仕入れ価格の高騰分を電気料金に転嫁できる上限があり、とうに上限を超えていた。そのため、コスト上昇分の一部は北陸電力が負担していた。
つまり、電力会社は身銭を切って電気をつくり、供給してきたわけだ。これは、すごい話。思うに、「俺たちはお客さまだ!」と偉ぶってみたところで、電力会社は発電するほど赤字が膨らむので、短期的には「お客さま」が重荷になる面もあったということである。
規制料金ではコストに対して安すぎた料金を、一気に妥当な水準に戻すことになるので、値上げ率が大きくなってしまう。むしろ、今まではオール電化住宅と比べて恵まれていたと感謝すべきかも知れない。
一方、自由料金では燃料費の高騰分を電気料金に転嫁できていた。
それなら、自由料金は上げなくて良いはずでは?
…ということは、価格転嫁できている「自由料金」は値上げの必要がないのではないか。
説明会に出席した水谷和久副社長は「現行料金の原価は志賀原発の稼働を織り込んでいる。今回は電源構成の変化を反映させるため改定したい」と話した。
原子力発電は原価が安い。同じ発電量でも原子力発電が含まれる場合と含まれない場合で、原価率は大きく異なる。この点、志賀原発は2011年から停止しており、今は再稼働に向けた安全審査中なので、いつから動かせるかを具体的には見通せない。
よって、燃料費の高い火力発電が当面の中心になる前提で原価を見直し、自由料金の設定にも適用するらしい。
【私見】「半独占企業」だからこそ
筆者としては、世の中のあらゆる商品・サービスが値上がりする中、電気料金も上がるのは民間企業が事業を営む以上は仕方がないと思う。
ただ、電力小売りが自由化されても、依然として大手電力会社の力は強い。特に最近は複数の新電力が潰れ、建前上は「競争市場」と言っても、事実上は地域ごとにほぼ独占状態にある。そして、光熱費の上昇は家計だけでなく企業の生産活動にも影響し、地域の浮沈につながりかねない。
ここがビールや冷凍食品と違うところ。「キリンが値上げなら、アサヒに乗りかえる」「冷凍チャーハンが高くなるなら、次から自前で作る」という選択がしにくい。影響力が大きく、消費者の選択肢が限られる中での値上げは、①サービス提供側の努力、②料金改定率の合理性、を前提条件として求めたい。
以前の発表や今回の説明会では、①、②とも言及があった。筆者としては負担増を歓迎できはしないが仕方ないと受け止めている。さあ、あなたはどうだろうか。