貯水率が20%を切っている手取川ダムに関し、あと8m水位が下がったら上水道以外で使用できなくなる「確保水位」に至ることが分かった。2023年9月15日に開かれた関係者会議で報告があった。
手取川ダムは天端高が469mで、最低水位が405m。9月15日8時現在の水位は423mで貯水率が19.1%。そして、確保水位は414.5m。貯水率は夏季として過去最低となっている(9月15日夕方には18%台まで低下した)。
これをイメージしやすいよう簡単なモデル図に示してみると、以下のようになる。
モデル図とは言え、それぞれの高さの比率は忠実に作成したつもり。現状、水色と青色の部分に水があり、薄い灰色に塗った部分には水がない。
9月15日に開かれたのは「手取川渇水情報連絡会」で、これまでの「情報交換会」を一段進めた会議として立ち上げた。国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所が事務局を務め、県や企業、土地改良区などがメンバーとなる。
説明によると、この確保水位に差しかかった場合、農業や発電用に使うための放水ができなくなるらしい。北陸放送(MRO)の9月15日夕方の報道によると、直近2週間で水位は10m下がった。あと8.5mということは…。
先に書くと、今回の会議は現状の確認や情報の共有にとどまり、今後に関する新しいアクションが決まったわけではない。
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この先1カ月の降雨は「ほぼ平年並み」
会議での金沢地方気象台の説明によると、2023年8月の降水量はダム上流にある「白山白峰」が101㎜で、平年の247㎜を大きく下回った。
9月上旬は北陸全体で見ると平年並みの降水量だったが、こと加賀に限ると、平年より「少ない」「かなり少ない」という水準にある。ここでも、降水量は平年と比べて6割ほど少ない状況だったという。
過去は過去として、気になるのは今後の予報。今後1カ月(9/16~10/15)の降水量は「ほぼ平年並み」とのことだ。
6月末までは平年以上の水位だった
金沢河川国道事務所手取川ダム管理支所によると、手取川ダムの水位は1~3月に積雪で覆われて下がり、3~5月に雪解けで高まって梅雨時期に横ばいで推移し、7~9月に下がる。秋は台風や秋雨により水位が回復し、また冬に下がる…というものだという。
2023年は6月末ごろまで平年を超える水位だった。1~7月にダムへ入ってきた水の量の合計は、平年よりはやや少ないものの、より少ない年もあるような状況だった。
ところが、8月に入ってから水の流入量は激減。水位はどんどん低下し、貯水率が夏季として過去最低になった(冬季はさらに低下するものの、雪解けが想定されるので心配が少ない)。
会議には電源開発(Jパワー)や北陸電力といった発電事業者、石川県手取川水道事務所、2つの土地改良区が参加し、現状で使用水量を減らしていること、でも今後は農業で水が要る時期なので限度もあること、これからさらなる節水が可能か検討することなどを共有した。
情報は共有も、危機感は共有できず?
筆者が今回、最も注目したのは、微妙に噛み合わっていないような会議の雰囲気だった。
ここからは筆者の私見や受け止めも混ぜて記述する。こういう行政系の会議では質疑応答や自由発言の時間に入って誰も手を挙げないのが通例。今回もそうだったのだが、それに業を煮やしたように、金沢河川国道事務所の西出保副所長が口を開いた。
「石川県さんに再び確認ですが、県民への節水の呼び掛けはないんですね?」
報道側からすればナイス質問である。県の手取川水道事務所の担当者が答える。
「それは市町とも協議、話し合いになる。今のところ、そういう予定は聞いていない」
筆者は椅子から転げ落ちそうだった。「今のところ聞いてない」って、県を代表して出席した人なんだろうに、めちゃくちゃ他人事な言い方じゃないか……。
会議終了後、報道陣の囲み取材(ぶら下がり取材)に応じた西出副所長は言った。
「今のところ節水を要請するには至っていないという石川県の話だった。でも、貯水率は低くなっているので、水を大事に使ってほしい」
せっかく情報は共有しても、肝心の危機感が共有できていないように感じた。
極端な例え話をする。早期に節水を呼び掛ければ「小まめに蛇口を閉めて」で済む。結果的に水位が回復すれば「良かった」と笑えば良い。JRの計画運休だって同じだ。でも、遅れると、呼び掛けの内容は「明日から風呂は2日に1回に抑えて」になるかも知れない。
これまで、この件で「今のところ大丈夫」という言葉を複数の行政関係者から耳にした。でも、目を向けるべきは将来であり、そこから逆算して行動するべきなんじゃない?早いに越したことはないだろうに「今のところ」って、何?
「水を大事に」。こんな当たり前の言葉を聞き、首がおかしくなるほど頷くことがあるとは…。なお、さらに確保水位が近付いたら、また協議の場を設けるそうだ。