共同通信社によって診療報酬の不正請求の疑いを報じられたサンウェルズ(金沢市、東証スタンダード)の株価は2024年11月15日、前日に引き続いて2日連続のストップ安となり、上場来安値を更新した。終値は150円(15.43%)安の822円。
東京証券取引所は翌営業日に当たる週明け11月18日の取引で、サンウェルズ株の制限値幅を下落方向に限って通常の4倍に拡大する。
制限値幅は1営業日の取引で株価が動き得るレンジで、その価格に至ると「ストップ高」「ストップ安」になる。幅は1株の価格ごとに異なり、700円以上1,000円未満の銘柄は上下にそれぞれ150円しか株価が動かない。ただ、2日連続でストップ高orストップ安になると、動いている方向にのみ幅が4倍となる。
11月15日の終値が822円のサンウェルズは、11月18日の上限が150円のままである一方、下限のみが600円に拡大される。これにより、ストップ高の株価は972円、ストップ安の株価は222円となる。
※時系列まとめは以下の記事を。
投資からマネーゲームへ
筆者のみたところ、サンウェルズは共同通信社による報道に対するIRの初動から失敗した。報道翌日に「そのような事実は一切ない」と断言し、法的措置を検討するとまで言い放った。その言葉を信じた投資家もいたはずで、株価は少しずつ戻した。
しかし、特別調査委員会を設けたが途中経過の報告がない。のちの決算延期までは既定路線だとしても、なぜか日を改めて「現時点までの調査の結果、行為を合理的に正当化できる事情が存在するものがある可能性も現時点で否定されないものの、本事案に該当し得る行為が一定の範囲で行われていたことを窺わせる情報が得られている旨の報告を受けております。」というIRを繰り出す。「クロっぽい行為が見つかった」ということだろうが、あえてゴチャゴチャした言い回しで誤魔化しているかのようだ。
マイナス材料が断続的に投下され、市場で不信感が高まる中、ネット掲示板では社長が個人として直近1年間で約200万株(だいたい50億円分)を売却したことも槍玉にあがる。「不正を知ってて売り抜けた?」「それなら全否定IRで墓穴を掘る?」と謎が深まっている。
何が事実で何が嘘か分からない。だから、上場廃止や刑事事件に発展するかも知れない一方、これだけ「クロ」と臭わせておいて「完全にシロでした」という調査結果が出ても不思議はない。そういう意味でも、投資対象というより「仮に紙切れになっても良いから急騰に賭ける」というマネーゲーム・ギャンブルの対象になりつつある。
同業他社が「チクリ」
この状況に、同業他社が決算資料で「チクリ」とやる場面も出ている。2024年11月14日に第3四半期決算を発表した日本ホスピスホールディングス(東京)は決算説明資料で、次の画像のようなスライドを挟んだ。
今回の件を念頭に置いているとみられる。サンウェルズの調査は2025年2月までの予定。投資家だけでなく同業者もいろいろな意味で目が離せない日々が続きそうだ。