金沢駅兼六園口(東口)の旧「ダイワロイネットホテル金沢」の所有者が大和ハウス工業の子会社に代わった。大和ハウスグループはホテルやマンション、商業施設などさまざまな開発メニューを持っている。
筆者は旧ロイネットの今後が、周囲を巻き込んだ大規模な開発にもつながり得ると注目している。
※この記事の㊤、初報は以下のリンクから
㊤で書いた通り、旧ロイネットを大和ハウスリアルティマネジメントが取得したのはホテル営業終了を間近に控えた時期。しかも、閉館ほどなくして「ロイネット」のロゴが外され、客室テレビが運び出される様子を現地で確認できた。
筆者としては、ホテルは他社に売却される可能性がないわけではないが、どちらかと言うと解体の準備が進んでいるとみている。
そこで、妄想フルMAXにより、最近の周囲の動きから今後の兼六園口(東口)の開発を予想してみたい(私見なので、ハズレても怒らないで!)。
※やや分かりにくいが、旧ロイネット周辺の地図を載せるので、適宜ご参照を
動き① 隣接の「ドーミーイン」が休業中
旧ロイネットを見に行って真っ先に気になったのは、隣接するビジネスホテル「ドーミーイン金沢」が臨時休業していることだ。
館内の設備工事に伴い、2023年3月20日~7月31日は臨時休業するらしい。しかし、ホテルのホームページに注意を引く文言があった。「休館期間は状況により予告なく変更となる可能性がございます」
JTBの旅行サイトによると、ドーミーインを経営する「共立メンテナンス」グループは石川県内で、このドーミーイン、七尾市和倉温泉の「能登 海舟」、金沢市下堤町の「御宿 野乃金沢」の3施設を展開している。後者の2施設は2015年の北陸新幹線金沢開業後にできた新しい施設である。
大和ハウス系と状況が似ている
ドーミーインは基本的に改修工事が進むだろうし、上の文言も工事が長引く可能性に言及しているだけだろう。
しかし「グループ3施設で最も古いのがドーミーイン」というのは、大和ハウスグループが旧ロイネットを閉館するに至った状況と似ている(詳細は旧ロイネット閉館の初報をご参照)。「結局ドーミーインはそのまま閉まり、旧ロイネットとまとめて開発される」という可能性もゼロではなさそうだ。
それでは何を開発するか、という点だが、今ごろホテルというのも考えにくく、少し奥まった位置からして分譲マンションが適当ではないか。
動き② 北鉄駅前センターが移転へ
「3カ所を2カ所に集約」というのが流行っているのだろうか。
北陸鉄道は2023年7月1日、金沢フォーラスとホテル金沢の間にある案内所「北鉄駅前センター」を金沢駅金沢港口(西口)の既存案内所内に移す。金沢駅に近い大和ハウス系のホテルが3カ所から2カ所に集約されたように、北鉄も案内所を3カ所から2カ所に統合する。
上の2枚の写真を見て分かる通り、バスロータリーに面する北鉄駅前センターは、裏手からコインパーキング、細い道を挟んで「旧ロイネット→休業中のドーミーイン」と続く起点に位置する。
背後にはバスの待機場も
北鉄は特にコロナ禍に入ってから経営環境が厳しいはず。急速に各地でスリム化を進めているところを見ると、駅前センターを閉め、いつまでも放置するとは考えにくい。
そして、興味深いのは、さらに北側へ進んだ箇所にバスの待機場「北鉄駅前モータープール」がある。場合によっては、ここも開発の候補地になってきそうだ。
充実した金沢のバス路線網も、最近は少しずつ縮小傾向にある。そもそも、必ずしも駅のそばにある必要はなく、少し離れた場所に代替地を見つけられれば、移転してもおかしくはない。
もっとも、さすがに道路を挟んで「北鉄駅前センター~旧ロイネット~ドーミーイン~バス待機場」という細長い土地を一括で開発する可能性は低いだろうが、そんな絵が描かれるなら、何とも面白くなりそうだ。
動き③ 売却方針のホテル金沢
【追記】2023年6月23日18時にサイトリ細胞研究所に取材したら「1年前の説明は当時の担当者による誤りだった。現状はホテルを所有し続ける方針」と訂正を受けた。ただ、今から逃げるように記事を消すのも変なので、こうして残しておく
さて、以前より当サイトで報じてきた(下記リンクを参照)が、兼六園口(東口)にあるシティーホテル「ホテル金沢」について、オーナー企業「サイトリ細胞研究所」は売却の方針を示している。
コロナ禍ということもあり、大きなホテルの買い手はなかなか見つからないようだが、この行く末次第では面白いことになる。
ホテル金沢がある一角は、同ホテルのほか、移転する北鉄駅前センター、コインパーキングしかない。そもそもコインパーキングは転用しやすく、仮に、それらが同時に動き出せば、旧ロイネットと無関係だったとしても、ダイナミックな動きに発展する可能性がある。
停滞感も漂う東口、打破なるか
ここに来て、金沢駅兼六園口(東口)での動きが激しくなってきた。確かに、2015年の北陸新幹線金沢開業前後に大きめの開発が相次いだ中心地は金沢港口(西口)であり、兼六園口(東口)側は駅の真ん前というより、やや距離のある地点が多かった。
逆に、兼六園口(東口)は「鼓門」の目の前にあった旧金沢都ホテルが2017年3月末に閉館。地上部を解体後に放置されたままで、金沢駅周辺の大規模開発が「踊り場」に差し掛かった停滞感を漂わせる象徴となっている。
都ホテル跡地をめぐっては、地元の一部が「オール石川で開発しよう」と勇ましい。ただ、そもそも都ホテル跡地は大阪の「近鉄グループホールディングス」の私有地である。
「オール石川」と言うなら土地を買うのか。都ホテル跡地は約5,000㎡。公示地価・基準地価を参考にすると、実勢価格は60億円弱ぐらい。しかも、迷路のような地下部の解体費用もかかる。それだけ負担する覚悟で横槍を入れるのか、単に賑やかしやポーズか。
都市が大きくなれば、より巨大な資本が開発の主役を担うようになる。金沢駅周辺だって、ホテル日航もANAクラウンプラザホテルもハイアット系ホテルも、フォーラスも百番街も、全て県外勢が開発した。市民感覚で言えば、それが当たり前だ。
コロナ禍で業績が悪化していた近鉄も、最近は商況が回復している。だが、筆者としては、いよいよ近鉄が都ホテル跡地の開発に臨むようになっても、上記のような田舎の論理が足を引っ張り、新たな停滞感を生むのではないかと危惧している。
だいぶ話が広がった。大和ハウスは金沢での開発実績が豊富で、県外の大資本だが半ば地元企業のような信頼感もあるだろう。そういう意味で、大和ハウスのグループが兼六園口(東口)でどう動くかは、今後の兼六園口(東口)の行く末を左右すると言っても、大げさではないと思う。
(おわり)