2015年、北陸最大の倒産劇を振り返る/企業は簡単に潰れる

北電が福井のIT企業を傘下に

北陸電力(富山市)は3日、福井県を中心にIT事業を営む「江守情報グループ」7社を買収したと発表した。既存事業領域の拡大や新事業領域の創出を図る一環となる。

北電の発表資料によると、同グループはオリジナルソフトウェアの開発・販売、国内向けパッケージシステムの提供、海外製ソフトウェアの独占販売など、幅広い製品を取り扱っている。

これまでは経営陣が7社全ての株式を持っていた。

3日以降は北電が80%、北電の完全子会社の北電情報システムサービス(富山市)が10%、もともとの経営陣が10%を持つ体制となる。そのため、7社全てが北電の連結子会社扱いとなる。

 

福井の江守???

上記のニュースは、簡単に言えば、IT企業も傘下に持つ北電がDXの進展などを見据え、電力事業以外の収益を伸ばそうと、営業エリアの企業を買収した、というだけで、不思議な話ではない。めでたしめでたし、である。

ところが、北陸の経済に詳しい人なら、このニュースで、ある箇所に引っ掛かるはず。

「……福井の江守だと???」

あれは今から6年前の2015年春。石川、富山両県が北陸新幹線開業後に初めて迎えたゴールデンウイークに沸いていた頃、福井で北陸史上最大の企業倒産劇が発生した。

その主人公こそ、当時、東証1部に上場していた「江守グループホールディングス(HD)」なのである。

売上高が2000億円超え

同HDは1906年、江守薬店として創業した。

その後、化学品や合成樹脂などの卸売り商社に発展し、1970年には江守商事に商号変更した。1994年には株式を店頭公開(現ジャスダック)した。

2005年には東京証券取引所2部に上場、2006年には同1部に市場変更となっている。

2005年ごろに中国へ進出し、順調に取引を拡大。組織を持ち株会社化して商号を同HDに変更した頃には、年間の売上高は2000億円を突破。そのうち、7割ほどを中国事業で稼いでいた。

当時、北陸に本社を置く企業で売り上げ2000億円を超えていたのは、他に北電と不二越ぐらいではないだろうか。それぐらいの規模感の企業だったわけだ。

さて、こうやって書いてくると、どこに綻びが出てきたのか、何となく察しがついてしまうだろう。

「絶好調」からの倒産劇が始まる。

決算発表を延期

2015年2月6日、同HDは突如として2014年4~12月期(第3四半期)の決算発表を延期すると発表する。

当サイトでは以前、クスリのアオキHDが決算発表予定日の夜になって急に公表を延期したことを「お粗末」と表現した。上場企業の決算発表というのは各関係者への約束事であり、それを延ばすというのは上場企業の責任として、あるまじきことである。

それゆえ、当時、さまざまな憶測が飛び交った。そして約1か月後の3月16日、ようやく同HDが発表した4~12月期決算は衝撃的な内容だった。約462億円の貸倒引当金を計上し、約234億円の債務超過に転落するというのだ。絶頂期に、急転直下の債務超過である。

「アジアの総合商社」を掲げ、急成長を遂げていた同HDに、いったい何が起こっていたのか。

実は同HDは同年2月、監査法人から、中国子会社で不正経理の疑いがあることを指摘されていた。

その後の調査で、中国子会社で日常的に「売り戻し」と呼ばれる行為が横行していたことが分かる。

売り戻しとは、仕入れ先と販売先が同じである架空取引を指す。謝飛紅という中国人責任者が自分の親族が経営する会社に仕入れ代金を実際に支払い、逆に販売代金は「未収金」として処理していたという。

負債総額は711億円

つまり、同HDからどんどん資金が出ていく中、売り上げはあるはずなのだが、売上金は入ってこないという状況である。実際、同社は2010年3月期から5期連続で営業キャッシュフローがマイナスとなっていた。

その未収金の回収が不可能であることが分かり、同HDは多額の貸倒引当金を計上するに至った。

慌てて資金を都合してくれる先を探したが見つからず。最終的に同HDの債務超過は343億円にまで拡大し、東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けるに至った。負債総額は北陸で史上最大となる711億円だった。

同HDは5月31日に上場を廃止。決算発表の延期を発表してから、わずか3か月後の出来事である。

北電の買収先は江守HDの倒産により独立

同HDの倒産を受け、中核事業会社だった「江守商事」は医薬品の興和グループ(名古屋市)の傘下に入り、2020年に社名を「興和江守」に変更している。

今回、北電が買収した7社は1979年に江守商事の情報部門としてスタートし、グループ会社を増やした。同HDが倒産し、2016年には情報事業のグループ各社を束ねる持ち株会社「江守情報」を設立。翌2017年には江守情報が江守商事の情報部門を会社分割で継承し、江守商事グループとの資本関係を解消していた。

同HD自体は2018年に「サスティナ」と商号を変更し、本社を東京に移して存続している。

さて、同HDの倒産を、後付けで「チャイナリスクを軽視していた」「チェック体制が甘かった」と分析するのは簡単だ。それはそれで必要なのだが、一個人としては、そんな非難をするのではなく、北陸有数の大企業が盛え、そして一瞬にして衰えた事実から肝に銘じるべきことがあると思う。

それは

会社は簡単に、あっけなく潰れる

ということだ。

「会社員だから安定している」と安易に言う人は、毎月の給料が一定という点を捉えているに過ぎない。時代の変化のスピードが加速する現代、昨日まで人々の生活を支えた事業が、明日には無用の長物と化しかねない。会社という存在は非常に不安定な存在なのだ。

私たちは、それを前提に自身のキャリアを磨かなければいけない。強固なはずの「会社という鎧」が、いつの間にかなくなり、気付いたら裸一貫になっていても、前を向いて押し寄せる荒波に立ち向かえるように。

 

…………

 

江守HDの倒産に至る経緯は、帝国データバンクによる下記のレポートが詳しい(ただ、かなり長いので、本当に関心がある人のみ参照をオススメする)。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67105

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