連載【加賀屋、あわら温泉へ】㊦ 福井進出でグループ内の「連泊」提案/小田社長「つるやはベクトル同じだから一緒に」/目指すは北陸発の総合旅館グループ?

あわら温泉の旅館「つるや」を承継した加賀屋(七尾市)の小田與之彦社長は当サイトの取材に対し、広域で複数の旅館を展開することで、旅行者が訪れた先々で加賀屋グループの施設を「連泊」する形を実現でき、同グループの事業の可能性が広がるとの認識を示した。(国分紀芳)

連載の㊤㊥は以下のリンクから。

ともに客室係にリピーターがつく共通点

なぜ、つるやなのか」。当サイトの取材に対し、小田社長は「つるやは過去の実績と評判で加賀屋のベクトルと共通点があるから一緒にやろうと決めた」と説明した。この「共通点」は、例えば、いずれの旅館も客室係にリピーターがつき、客室係経由の予約も多いところにみられるという。

加賀屋が承継した老舗旅館「つるや」=あわら市内

つるやをグループに迎えた10日、小田社長はスタッフに向けてメッセージを発した。つるやがあわら随一の老舗名旅館であり、旅行サイトの評価も高いと紹介した上で、つるやが築き上げた歴史や伝統に、加賀屋グループのおもてなしの心や運営ノウハウを加えたいと伝えた。

今回のM&Aは「コロナ禍で倒産寸前の手頃な旅館を救済した」のではない。あくまで「コロナ後、うちじゃなくても自力で業績回復ができる旅館」(小田社長)を戦略的に引き継いだもの。旅館としての考え方やレベルに親和性があるからこその決断だった。

移動しながら加賀屋を「はしご」

では、そもそも「なぜ、あわらなのか」

2015年の北陸新幹線金沢開業により、車で1時間かかる金沢ー富山は新幹線で20分そこそこ、隣町のような時間距離になった。

23年度末の敦賀延伸により、北陸は富山~石川~福井が新幹線で結ばれ、域内の移動はもっと便利に、速くなる。そうなると、旅行客はより広域で北陸を周遊するようになるだろう。

福井県内には世界有数の恐竜博物館、永平寺、東尋坊など類例のない観光資源が多い。その割に、コロナ前時点ではインバウンドの宿泊が全国最低クラスに少ないなど、観光産業が盛り上がりに欠けていたように思う。ただ、この連載の「㊥」で見たように、敦賀延伸後、あわら温泉の宿泊者数は加賀屋が本拠地とする和倉温泉を逆転する可能性もあり、伸びしろは大きい。

七尾市和倉温泉の加賀屋

加賀屋グループは現状で和倉温泉と金沢駅前に旅館を展開するが、国内では石川県以外で旅館を経営していない。

つるやが加わることで、例えば、能登→金沢→福井と周遊する旅行者に対し、同グループの旅館を「はしご」する提案ができる。敦賀延伸効果をグループ内に取り込み、金沢開業効果が一巡した和倉温泉や金沢駅前の旅館にも少なからず波及させられそうだ。

ただ「お待ち申し上げる」じゃ生き残れない?

和倉のネックは交通の不便さ。現状は新幹線、在来線特急の終着駅が全て金沢で、金沢から和倉行き特急列車がある。いわゆる「終着駅効果」を享受しているが、新幹線が敦賀に至れば、関西・中京からは敦賀乗り換えが必須で、新幹線も金沢止まりばかりではなくなり、和倉へのアクセスは悪化する。

良い旅館をつくっても、交通アクセスという外部環境が大きくマイナスに振れれば、元も子もない。一般論として、ひたすら「お待ち申し上げております」のスタンスでは先細りの懸念が拭えない。

今回、加賀屋は自ら本業で石川県を飛び出した。筆者としては、今後、現状のサービスレベルを保てる相手を見極めながら、徐々に拡大路線を進み「北陸発の総合旅館グループ」のような形を目指すと推測している。

旅館業界はホテル業界と比べて多店舗展開が遅れているが、先行例がないわけではない。

低価格帯には「湯快リゾート」「大江戸温泉物語」があり、高価格帯には「星野リゾート」がある。加賀屋が狙うなら基本は後者だろうが、一部に前者の低価格的要素が入っても面白いだろう。

新型コロナの世界的拡大を経て、観光産業を巡る状況は大きく変化している。先行きが見通しにくい中、新幹線が新たに通る地域は市場の回復・拡大の確実性が大きく見えるはず。新幹線敦賀延伸まで、あと2年。あわら温泉~加賀温泉郷のエリアで、既存の宿泊業者によるさらなる進出事例が出ても不思議ではない。(おわり)

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